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名古屋地方裁判所 平成5年(ワ)3175号 判決

《住所略》

原告

鈴木斐

《住所略》

被告

伊藤喜一郎

右訴訟代理人弁護士

土屋公献

浦野雄幸

高谷進

花輪弘幸

小林哲也

小林理英子

主文

一  本訴訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  本件における請求の趣旨及び原因は、別紙訴状写しのとおりである。

二  名古屋高等裁判所は、抗告人被告、相手方原告間の平成6年(ラ)第24号担保提供申立却下決定に対する即時抗告事件につき、平成7年3月8日、「相手方は、名古屋地方裁判所平成5年(ワ)第3175号損害金並びに貸付金の返還請求事件についての訴え提起の担保として、この決定送達の日から14日以内に、金800万円を供託せよ。」との決定をした。

右決定の正本が、同年3月11日に原告に送達されたことは、記録上明らかである。

三  しかるに、原告は、右期間経過後も担保の提供をしない。

四  よって、民事訴訟法117条、114条本文の規定により、本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき同法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大谷禎男 裁判官 安間雅夫 裁判官 土屋信)

(別紙)

訴状

原告・《住所略》

鈴木あきら

被告・名古屋市中区錦3―21―24

株式会社東海銀行

右代表取締役頭取

伊藤喜一郎

損害金並びに貸付金の返還請求事件

請求の趣旨

一.被告は、株式会社東海銀行に対し、金150億4700万円を返還せよ。

二.被告は、株式会社東海銀行がセントラルファイナンスサービス株式会社へ融資している貸付金、1100億円を直ちに返還させよ。

三.訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

請求の原因

一.原告は、本事件を提訴することの権利を有する株式会社東海銀行(以下当銀行という)の正当な株主である。

二.被告は、昭和63年6月から現在に至るまで当銀行の代表取締役頭取の地位にある。

三.同被告は、その経営責任下において、平成4年4月1日から平成5年3月31日、即ち当銀行第91期決算中において、株式会社セントラルファイナンス(以下セントラルファイナンス社という)支援と称し、同社の抱える「尾上縫」向け債権の内、全く回収不能な不良債権、111億9700万円相当を 正当な理由なく故意 に肩代し、同額を当銀行の貸倒引当金に繰入し償却した。

四.更に、セントラルファイナンス社の子会社セントラルファイナンスサービス株式会社に対する背任の貸付金の返還・回収ならびに同貸付金の金利減免による損害等の請求について。

(一)(貸付金の返還・回収請求)、被告は当銀行の

第91期中において、セントラルファイナンスサービス社に対して、当銀行資金、1100億円相当を無担保・無利子同然(減免金利年2%)で貸出し、現在も継続中である。

この融資は、金利減免どころか、元金そのものが全く回収不可能となる貸倒れ見込みの「恐るべき不正・不法な背任融資」そのものといわざるを得ない。この根拠として、貸出先セントラルファイナンスサービス社は、その設立主旨が、親会社の抱える全く回収不能な不良債権を分離譲渡するためにつくられた、いわば不良債権の管理会社であるから、不良債権が山ほどあっても会社財産らしき物は全く無いに等しいペーパーカンパニーなのである。

つまり、セントラルファイナンスサービス社には、最初から借財返済の財源も能力も全く無いのであるが、被告はそれをすべて承知の上、巨額を無担保・無保証で貸出した。この融資は、その条件上、やがて必ず貸倒れとなるものだから、きわめて悪質な背任融資である。

よって、原告は被告に対し、同貸出金の即時中止ならびに同資金の返還・回収を求めるものである。

(二)(金利減免による損害金の返還請求)、当銀行第91期中のセントラルファイナンスサービス社に対する貸付金は1100億円。この受取利息は年2%の金利減免で22億円。もし、これを一般貸出平均利息、年5.5%で計算するならばその受取利息金は60億5000万円である。

つまり、減免金利と一般貸出平均金利の受取利息の差額分、38億5000万円。これが被告が当銀行第91期中に与えた返還責任ある金利減免による損害金である。

五.また、セントラルファイナンス社は、当銀行の株主でもあるから、被告が当銀行に与えた損害金合計150億4700万円(セントラルファイナンス親会社分、111億9700万円+子会社分38億5000万円)は、背任行為のみならず、株主への利益供与禁止令にも著しく違反するものである。

六.(違法行為の背景と原因)、当銀行とセントラルファイナンス社とは、株式の持合はあっても、法的な親子会社関係は一切無い。

しかし、被告は、代表権を乱用してまでも、様々な口実を設けて、また様々な不当・違法行為を重ねてまでも、セントラルファイナンス社の再建支援を積極的に行われている。

この背景にある原因及び理由として、―――、過去、バブル経済期の頃、被告は、被告の親分格、元当銀行のワンマン会長、現相談役の加藤隆一らと共謀し、悪徳主義からセントラルファイナンス社の不当経営介入を積極的に行われた。

この中には、金融犯罪である迂回融資も多くある。この代表的なものが、「尾上縫向けや有限会社志摩」へらの焦付融資である。その他、こうした類似の不良債権が急増した。この結果、昨年セントラルファイナンス社は倒産寸前に陥る。この経営責任は誰にあるかといえば、――当然その大半は不当経営介入してきた被告らにもある。

しかし、被告らは、刑事・民事の両面から身を守る為、その経営責任を全く認めず、すべて部下や関係会社へ押付ける。その変り、金融面で協力支援しようというのが被告らによるセントラルファイナンス社支援の真相なのである。

今後、この支援は、更に継続拡大が必要とされるところから、当銀行の負担損害額も更に拡大し、最終的には、損金合計2000億円にも達するものと思われる。

七.被告は社会的にも信用・正義等を最も重んずべく大都市銀行の頭取である。

しかし、その頭取がその保身から、己の「失敗や金融犯罪」を巧みに隠ぺいする。そのためには、当銀行に「巨額の損害を与えてもかまわない」といった、きわめて悪質な背信・背任行為を巧みに行う。こうした卑劣な知能犯頭取は、当然社会的にも厳しく抹殺をされねばならない。

八.以上の事実から、被告が行った不当・違法行為ならびにその動機、またその取るべき社会的責任等ははっきりとしている。けれども被告は、その罪状認識も反省も責任も全く表明することなく、むしろ問題の隠ぺいに自信がある故、堂々と居直り続けている。

よって、今後、更に、より一層悪質化する恐れが充分あるので、この際被告に厳しい裁断を与える必要があると思うところから、本訴に及んだ次第である。

証拠の方法

追って、口頭弁論において提出する。

付属書類

〈1〉資格証明書

〈2〉原告の所有株券のコピー

〈3〉東海銀行第91期末の貸借対照表及び損益計算書のコピー

〈4〉監査役への訴訟請求書

平成5年10月1日

原告・鈴木あきら

名古屋地方裁判所 御中

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